ジャスパー・ジョーンズ1

2023年4月21日配信
アート百花

まとめ

才能だけじゃない?ジャスパー・ジョーンズに学ぶ「創造性が続く仕組み」

「あの人はなぜ、あんなに次々と作品を生み出せるんだろう?」

「どうしてその手法にたどり着いたのか?」

作品を単に「綺麗だな」「素敵だな」と眺めるだけでなく、アーティストの内側へしつこく入り込み、その思考のプロセスを解き明かそうとするーー。そんな独自の視点を持つ川田が、現代アートの巨匠ジャスパー・ジョーンズを切り口に「創造性の正体」に迫ります。

💡 この記事のポイント

「物」から「プロセス」の時代へ

完成された「結果」だけを見るのはもう古い?今、私たちが注目すべきは、作品が生まれるまでの「事(プロセス)」にあります。

日本のアート界における大きな損失
アメリカ美術研究の第一人者・林道郎氏が一線を退いた。ジョーンズ展の「パイプ役」を失った今、私たちが自ら彼の資料から学び取るべきこととは。

「持続可能なクリエイティブ」を身につける
一発屋で終わらず、安定して自分らしく表現し続ける。日本人がまだ教育されていない「クリエイティブに生きるための方法論」を、90歳を超えてなお現役のジョーンズから学びます。

「自分らしく生きたい」「創造性を形にしたい」と願うすべての人へ。
評論家でも研究者でもない、現場のアーティストだからこそ語れる「踏み込んだ、ちょっと危なっかしい(?)本音トーク」をぜひお楽しみください。

いや、今日もね、配信ができてるし、改めて聞いて「あ、ちゃんと喋ってるな」と思うんだけどさ。またね、リヒターのね、続けて聞いたんだけど、あ、結構いいこと言ってるわと思ってね。

よかったと思うよ、あれね。なかなかな内容がいいと思う。現代作家の本ってね、やっぱりなかなか出版されないし。美術手帖とかで出版されることはあるし、雑誌に紹介されることはあるけど、結局、現代作家ってさ、まだ評価が固まってないから下手なこと言えないんだよね。だから当たり障りのない情報しか出てないから。

そういう意味では、結構踏み込んだこと、私言ってるので。まあ、なんか危なっかしいなと思って聞いてる人もいるかと思うんですが、あれはあれで、私はほら、評論家でもないし、研究者でもないし、大学の教授でもないし。もうフリーで、その辺でさ、埋もれてる作家だから、何言っても許される、みたいなところはあると思う。

有名人じゃないからね。有名人になると、これが厳しくなるし、期待されちゃうし。もっとこう、いろんな人のこと考えて喋らなきゃいけないと思うんだけど、影響力出ちゃうからね。だから下手に関係者というか、登録者数が増えるとどうなのかなーってのもあって。ビビっちゃって、思い切ったこと言えなくなるから。

ようやく700(人)なんだから、もう増えないって(笑)。一気に伸びることもないし。

でもね、最近すごくいい格言を聞いたのよ。「YouTubeで言っていいこと、悪いこと。言っていい時、悪い時。言っていい人、悪い人」。これはね、田中角栄の格言なんだって。

例えばさ、私が気軽に現代アーティストを酷評しても、別に何ともならないと思うんだけど、やっぱり美術館の学芸員なんかはなかなか言えないんだよね。ましてや同業の、私なんかがね、このひよっこがね、大御所に対して「こんなことは言えません」みたいなのは、やっぱりあるんだけど。まあ、海外のアーティストだったら、リヒターなんかもう雲の上の人だからさ、私が何を言おうと何ともないと思うんですが……。

実は最近、この本を入手したわけ。これが、ジャスパー・ジョーンズの最新の資料。イェール大学が中心になって共同で展覧会をやった時のカタログなんだけど、ジャスパー・ジョーンズってもう90何歳だから、リヒターよりも年配なのよ。アメリカの大御所、もう大巨匠なんだけどね。

ここにね、日本人の評論家の名前が挙がってて、文章を寄せてる。誰だろうと思って見たら、林道郎さんっていう……もう、アメリカの抽象表現主義から現代絵画全般、全部この人が請け負ってるっていう立場のアメリカ美術研究の、凄い人だったんだけどさ。

これが(林さんの)最後の仕事になったと思うんだよね。美術手帖なんかで調べれば読めると思うんだけど……。非常に痛い話でさ。おらく日本に、リヒターの次はこれが(ジャスパー・ジョーンズ展が)来るはずだったんじゃないかなって私は思ってたの。林道郎さんっていうパイプ役がいたから。でも、そこにぽっかり穴が開いちゃった。これ、日本の美術業界にとって、ものすごい損失なんですよ。

まあ、そういう脈絡とは全く別のところに私はいるので。弟子でもないし、関係者でもないし、作品を見てもらったこともないし。全然関係ないんだけれども、まあ、この人を(著書などを)通して得た情報というのは大変大きなものがあるので、本当に残念だなと思いながら、この本を読みました。

それでね、今回なぜ私がジャスパー・ジョーンズを取り上げるのか。

タイトルを私なりにつけました。ジャスパー・ジョーンズという人間を取り上げるというよりは、「創造性っていうのは一体どういう仕組みから来るのか」という話をしたいと思う。

皆さんは作品を、心の拠り所にしたり、「いいな」とか「この色素敵だな」とか、そんな気持ちで見てる人が多いと思うんですが、私は全然そういう目で見ないんです。どういう風に見てるかというと、私はアーティストなので、「この人はなんでこんなにたくさん作品が作れるんだろうか」とか、「これはどういうきっかけでこういう手法を使うようになったのか」とか。

作品を見るってことは、その人の中に、しつこく入り込もうとすることなんです。

今まで、美術ってさ、文学部の哲学の中にある「美学」から枝分かれしてきたから、実際のアーティストや美大生と、ものすごく距離がある話だったの。学芸員とアーティストの見ている世界も、全然噛み合わない。そこを私は、たまたま両方にいたことがあるから、橋渡しができるんですよ。

「できてるもの(結果)が重要なのであって、どう作ったか、背景なんて全然関心がない」っていうコレクターの人もいるけれど、そういう考え方はもう古いのよ。物主義なの。

今はね、プロセス(事)の時代なのよ。

ジャスパー・ジョーンズが一番見せたいのは、プロセスなんです。そういう目で見ると、やっと一般の人たちがジョーンズに追いつける。

社会の枠から外れてもいいから自分らしく生きようとする人が増えているけれど、日本人はまだ「持続的に、安定してクリエイティブに生きる方法」っていうのを教育されていないんです。一発屋じゃダメなの。

だから、それをジャスパー・ジョーンズから学びたいわけ。ここ、すっごく得るものが大きいなと思ってるので、ぜひ紹介したいと思うわけです。